Revive

目の前がまっさらになる、AM4:30

綿矢りさの「勝手にふるえてろ」が好きだった。

中学時代の恋愛を引きずる20代OLの話なんだけど、もはや"痛々しい"ほどの熱情的な片思いの様子(もちろん中二病の主人公はさっぱりとしたふりをしているのだけれど)が、中学生のときの自分にはとてもリアリティを持った物として受け止められ、時に自分の恋模様に重ねたりしていた。

 

石田衣良の「4TEEN」も大好きだった。

中学生が社会の理不尽に対して直球で大人に反抗する快活さが好きだった。残酷なほどまっすぐな姿に勇気をもらったし、紙面上ながら自分事として少年たちの焦りや苦しみ、その先の歓びを実感していた。

 

青春とは傷跡だと思う。

何を考えてるのかさっぱりわからない友人に対して傷つき、傷つけられ、もう大人なんだから、という言葉とともに理不尽を押し付ける大人に反抗し、しょうもない恋愛を繰り返し、大人になった"気がして"、また失敗を繰り返す。ただまっすぐにまっすぐにまっすぐに、残酷に走り抜ける。その先にはボロボロの心しか残っていないことを知っているのか知らないのか、"青春"期にある者同士は傷つき傷つけ合って、そして満面の笑みを浮かべる。

 

もうぼくには、それに「痛々しい」という感想しか得られなくなった。2019年9月17日、20歳になったその夜、ぼくの心は何者かによって改ざんされ、いつまでも大人になることを拒絶していたぼくは強制的に大人の仲間入りをさせられた。楽しかった”青春の想い出”は、ただの"痛々しい病状記録"に書き換えられていた。それが、大人になるということだった。

 

体内に残ったわずかな記録を元にまだ大人になるまいと抵抗した僕だが、つい先日、その記録も消されてしまったようだ。

 

19歳の"少年"が、目の前でどこかへ向かって駆けていくのを目の当たりにした。少年よ、その先には君が傷つき、苦しむ運命しかない。大人に騙されて、君は使い捨てられてゴミ箱に送られる未来しかみえない。口では「もうこりごり」などと格好つける彼は、虚ろな、しかしはっきりとした目線をその先に向け、走り続けている。ぼくには止める資格はないし、かといって見守ることすらできない。目を背け、衝突音だけを聞き、虚無の中で僕はたたずんでいる。それだけ。

 

少年少女よ、ぼくのように必死で子どもであり続けようとする無残な大人の姿にならないように、今を心ゆくまで楽しんでほしい。傷つけることを恐れてはいけない。いくらでもヤンチャすればいいよ。それがおじさんとの約束。